13戸(内3戸は店舗) 賃料:住居約7万円・店舗約15~25万円
貸主は地元の地主さんである。店舗においては、古本屋・バー・歯科が入居。1階に店舗が立ち並び、二階より上が一般住居である。この場合は通常、店舗から交渉して行い、その後に住居にあたるのが原則であるが、今回はオーナーのご希望により同時スタート。先ずは店舗・住居同時に挨拶して交渉をスタートする。
住居に関しては、概ね、相場或いはそれ以下ですすんでいった。住居にて少し問題となったのが、外国籍の女性と30代の男性。女性は連絡が取れず、男性は金額を言わないが高額要求を宣言してきたので、その他を確実に合意を図っていく事にした。その間、赴くたびに店舗に顔を出して退去期日をお伝えしながら様子をみる。
そうこうしながら訪問と置手紙を繰り返すうちにやっと外国籍女性とコンタクトできた。突然の事にびっくりしていたとの事でどうしていいか分からなかったという。そこで、オーナーの事情を説明し相応の金銭給付にて早期に和解を得た。これで残りは住居1戸と店舗となった。
そんなやり取りの中、少しずつ歯科医以外はコミュニケーションが取れ始め、商売の話やその他もろもろの話が出来る様になってきた。こうなってくると多少の突っ込んだ話をしても関係がこじれる事は少ないので一般的な条件(店舗は査定ポイントが多岐にわたりすぎるので最初の条件提示が難しい。)を説明し、移転リスクなどをヒアリングした。その中で問題となるのが古本屋は古書置き場、バーは代替物件の確保だが空き物件の候補も無事見つかり交渉は進んでいった。
ただし、人の流れがかわると商売は影響を受けがちなので補償問題が持ち上がる。そういった話をからめて折衝をしていきおおよその数字が見えてきた。
しかし、歯科医は「駅前に一番多いのが、不動産やと歯医者である。」為、引っ越すと患者さんが今と同じに来る保証がない点と、内装に大金をかけてしまったという。また、弊社がリサーチしたところ歯科医院は免許の手続きやら設備のユニットの問題などが絡み引っ越し業者も専門的な者になるとの事-因みにこの時期東京駅前のビルに入居していた歯科医院は数億の立ち退き料をせしめている-。立ち退き要請する際、歯科医は正当事由の強弱はあるが特に注意を要する。
その間に、交渉を続けてきた本屋と、バーは条件が詰まってきた。住居で残っていた男性は本屋さんと仲が良いので本屋さんを通して聞くところによるとさほどの金額でもない。そのため合意を図る事にした。これにて、住居部分は全件の合意。
古本屋とバーも、大家さんの正当事由、判例の説明を絡め裁判リスクを互いに控える事が賢明である旨を伝え続けある程度の数字にて納得してきた。最終的な調整のために過去の納税証明書類等を古本屋とバーに求めたが提出はしてもらえなかったので、要求根拠を全てだしてもらい話の筋道がおかしなものは一つずつ消していく。
要求根拠がなくなると、目にみえない売上減損分と休業補償を持ち出した。このケースではあてはまらないと思うのだが、こちらは借家権割合に基づく算出などから数字をはじき出して金額と時期を明確にして合意に向けた話し合いに入る。
結局、歯科医は弁護士を立ててきた。オーナー様も弁護士をたてて争うと言う事になり弊社の顧問弁護士を紹介して争うつもりであったがオーナー側の顧問弁護士を活用したいと言う事なので弊社の業務はここまでになる。
和解条件が難しいのと、それを金銭におきかえるとどうしても超高額になるのであろう。
医療関係者の立ち退きの難しさを思い知らされた一件である。